大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)893号 判決 1954年7月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士高木定義の上告理由は末尾添付別紙記載のとおりである。

同理由第一点について。

しかし、原判決の認定したところによれば、本件売買代金三十万円の支払については、昭和二六年二月二十三日被上告人は内金として既に支払つた金八万円のほか更に金五万円を上告人に支払い、同年三月中までに、被上告人において訴外飯塚信用組合に対する上告人の債務を弁済し、抵当権設定登記の抹消を済ませた後、残代金の支払と引換に、本件建物につき、被上告人名儀に所有権移転登記を受けると共に、その明渡並に動産の引渡を受けることに話が決まり、被上告人はこの約定に基き、同年三月十日、右信用組合に対する上告人の債務金六万四千円を支払い、同月十六日建物抵当権設定登記の抹消登記を済ませ(上告人が被上告人より本件売買代金の内金として、前記信用組合に対する債務弁済金を含め、合計金十九万四千円の支払を受けたことは争がない)たものであるというのである。

してみれば、本件においては、売買の残代金支払と所有権移転登記、建物明渡並に動産引渡とは同時履行の関係にあるものと言うべきであり、反対給付の提供なき上告人の右残代金支払の催告は被上告人を遅滞に陥らしめるに足らず、従つてこの催告に基づく解除は効力を生じ得ないものである。されば、この点に関する原判示は正当であり、所論のような解除に関する法律の適用を誤つた違法もなく、審理不尽もない、論旨は理由がない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せずまた同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従ひ裁判官全員一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例